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イカレポンチのうさぎ(1)

Posted by: admin

8月 26th, 2011 >> 未分類

私の娘はイカレテいる。イカレポンチのコンコンチキだ。48歳にもなる娘だが、イカレテいるので今も独り者だ。娘のイカレ具合は、ひと目見れば誰でも解る。娘は常に黄ミドリ色の服を着ているからだ。上から下まで、下着も、靴下もTシャツもストッキングもズボンもスカートもコートも全てだ。一瞬、うっ!と胸がつまるほどのショッキングな黄ミドリ色の服を、一体どこで見付けて来るのかは謎だ。更に娘は、耳が異様に長いうさぎのぬいぐるみを肌身離さず持ち歩いている。この姿を見てイカレポンチだと気が付かない人がいたとするなら、それはソイツがイカレポンチだからだろう。娘の母親は、つまり私の妻だが、娘が5歳になった日の朝に亡くなった。死因は癌だ。3年間、闘病を続けている妻の所に娘と二人で何度となく見舞いに行っていた。妻は、うぐいす色のカーディガンを羽織って、私と娘が来るのを病室で待っていた。娘の3歳の誕生日、どうやって病院から抜け出す事が出来たのかは解らないが、妻は自力で娘へのプレゼントを用意していた。それが、今も娘が持っている耳の長いウサギのぬいぐるみなのだ。もう、45年もの間娘はうさぎを引きずっている事になる。うさぎはボロボロになっているが、「手術をすればだいじょうぶ」なのだそうだ。実際、うさぎには何度も手術した痕がある。小さい頃から娘が針を持ち、色んな色の糸で手術を繰り返してきた。母親が亡くなった事がどう云う事なのか、暫くの間娘は理解できずにいたが、病室に行っても、もう「私の可愛いうさぎちゃん」と呼ぶ母親がいなくなった事は解るようになった。妻が亡くなってから、娘が欲しがる洋服の色は黄ミドリ一色になっていったのだ。娘の目には、妻が羽織っていたうぐいす色のカーディガンが、母親の明るい笑顔と相まってとてもきれいな色に見えていたのだろう。娘は、耳の長いうさぎを私が洗濯する度に、張り裂けんばかりの声をあげて泣き出し、近所の人が何事かと家に飛んで来るほどだった。「いや、うさぎのぬいぐるみを洗っていましてね」私がそう言うだけで、誰もが納得した。